上越出身の建築家渡邊洋治設計の斜めの家を見学する。
- 2020-03-09
- 建築見学
先週のことになりますが、事務所の近所にある長年見学したいと思っていた建物を見学する機会を頂きました。
上越出身の建築家で、狂気の建築家とか異端の建築家とか鬼才、鬼軍曹なんかの異名をもつ渡邊洋治設計の斜めの家です。
コルビュジェの弟子だった吉阪隆正に師事した建築家で市内にもいくつか建物がありましたが(旧労災病院や個人住宅など)今は取り壊されていて市内ではここだけ?になります。
糸魚川市では糸魚川善導寺がありdocomomoに選定されています。東京では軍艦マンションが有名で愛着をもつ人も多く、現在はリノベーションされて色々と活用されているようです。
私がこの建物の存在を知ったのは、建築家で建築史家の藤森照信さんの本に登場したことです。
本の中では「直江津駅から数分のところ」と書いてあってずいぶん探し回っていた時期がありました。
本を読んでの印象が「銅箔で張られた外観」というのが頭に残っていた。
今でこそ錆で落ち着いたとてもカッコイイ建物だけど、完成当初はピッカピカな状態。想像するだけでもすごい(笑)
そんな建物を発見した時のスッキリ感は快感です。
それがもう随分前のこと。
その後、この建物はしばしば地域の情報誌のロケ地になっていたりするのを見たり、保存グループが活動しているのを知る。
その保存活動をしている主メンバーが、NAKANO☆DESIGN一級建築士事務所の中野さん。
共に新潟工科大学で非常勤講師をしていて(担当講義は違うけど)、お会いした時に「ずっと見て見たかったんですよねぇ」と言っていたら、「風通しのために開けにきたけど見学する?」と連絡を頂き、行ってきました。
斜めの家と名付けられた住宅。
断面が気になっていたけど、内部はスロープによって構成されていた。
スロープ沿いに各部屋がくっついていて、各部屋のつながりがもたらされている。
スロープは見たことのあるアントニンレーモンドの夏の家のような雰囲気。ただし、レーモンドの夏の家はコルビュジェのオマージュ作品ということでこのスロープはコルビュジェの影響なのかな?
(レーモンドの夏の家)
印象的なのは小さなぽつ窓。
窓だったり、壁に空けられていたり。
これはコルビュジェのロンシャン大聖堂的な感じで、そこからの光が面白い。
外光を赤の絨毯の床で受けて奥に赤い光を届ける方法はコルビュジェのロンシャン大聖堂の色ガラスからの光から着想しているらしい。
それを聞いて、窓だけではなく壁にも穴が開けられている意味がわかった。
穴の空いた壁からは床からバウンドした赤い光が一番外の壁に映し出され、外の窓からは内側の壁に四角い光の跡が残る。
色々な方向からの光の跡が楽しめる幻想的なスロープなんだなぁ。。。
だからインテリアの色使いも大胆なんだ。そしてカッコイイ。
建具も、雨戸、ガラス戸、簾戸、障子戸と構成されている。
簾戸で抑えられた明かりもカッコイイ。
1975年に建てられた斜めの家は、渡邊洋治最後の作品。
2008年まで実際に暮らしがそこにはあり、今は保存に向けて活動されている。
やはり家は住まないと痛むのが早すぎる。。。
渡邊洋治最後の作品としてできる限り現状を維持したいとのこと。
保存活動って難しい。
活動されている方の努力に感謝いたします。