野尻湖ホテルエルボスコで体験記。
夏休みの話でもう随分と前だけれど、どこにも連れて行ってあげられなかったこと、仕事を少ししたかったこともあり、急遽野尻湖ホテルエルボスコへ宿泊することに。
数日前にダメ元で覗いてみたらまだ部屋が残っていたのでこれも何かの縁と思い宿泊を決定。
建築家清家清設計のホテルはいつか泊まってみたかった場所。
近いので度々訪れていたけど、あまりに近すぎるので宿泊する機会も少ない。
とてもいい機会でした。
過去の訪問記がありますので、そちらもどうぞ。
宿泊棟は半島に沿った形で平面が作られ、野尻湖湖畔の森にひっそりと佇む。
通路から視線が抜けて森の中へでる感覚はワクワクする。
視線の先が開かれることにより、無意識に誘導され、ドラマティックな開放感を予感させる。
広さの感覚は単純な数字の大きさではない。
この感覚は家づくりでもとても大切なこと。
こういう実体験はとても勉強になります。
解放された突き当たりの小さなアルコーブには外に向かって椅子が並べられ、居場所がつくられている。
椅子のあるなしは大きい。
椅子の存在は空間の価値を変えると思う。
腰掛けて外を少し眺めてみよう。腰掛けてみたら気持ち良さそうと感じさせてくれる。
エルボスコにある家具は全てがプロダクトデザイナー渡辺力のもの。
リキクロックなんかで馴染み深いデザイナー。
素朴で簡素なウィンザーチェアが森の中の雰囲気を一層深めてくれる。
部屋は小さなツインの部屋を予約。
扉を開けて下に降りてワンルームに広がる部屋。
小さな部屋の外との仕掛けや距離感を勉強したい。そう思っていた。
それがエルボスコに宿泊したいきっかけだった。
スタッフの方に案内されて部屋に入る。
階段がある。
なぜか降りるのではなく上がる。
???
部屋がメチャクチャ広い。。。広いのではなく、部屋の中の部屋数が多い。
リビング、寝室、トイレ2つ、洗面に。。。
頭の中が整理できずに、間違ってすごい部屋予約してしまったのか?と焦ったら、アップグレードによりメゾネットのスイートの部屋にしてくれていた。
なんとも嬉しいサプライズ。
それと同時に、あまりに普段とかけ離れた空間に、小さな部屋の体験ができずに少し残念な気持ちにもなる。
次の機会を作れということなのだと思いながら、非日常を体験する機会にしようと頭を切り替えた。
リビングスペースは森越しの野尻湖を望める大きな窓。
景色を切り取り、部屋の中に取り込むのだけれど、木々が近いために落ち着いた開放感がなんとも気持ちがいい。
この形状はどの部屋も一緒だったと思う。
開放感を得るためには同時に落ち着きを得なければ心地よくない。
開放感を得るために何でもかんでも開放してしまおうというのはあまり得策ではない。
しっかりと拠り所のある落ち着きを持った仕掛けで、森の中の開放感を存分に感じられた。
こういう体験は本当に身になるなぁ。
ダイニングスペースのような設えもある。
10畳を満たない空間にリビングスペースとダイニングスペースのある距離感は参考になる。
ごく一般的な家づくりのサイズがそこにあった。
大きな開口の反対は、中庭に面した小さな窓。
勾配天井の空間ボリュームと壁の量と窓のバランスがいい。
部屋数は多いけど、サイズ感はとても参考になる。
人の居心地は大きくなろうが、ゴージャスになろうが、ヒューマンスケールを逸脱しないことが大事だと思う。
人に忠実であるというのは、暮らしの工房の家づくりの信条でもあるから、大変参考になった。
部屋はスキップフロアで構成されている。
リビングフロアより1mほど上がって寝室に。
視線の先が常に外と繋がっているため、閉塞感がなく気持ちがいい。
リビングと寝室、スキップフロアの関係がとてもいい。
寝室からリビングの見返し。
下視線のリビングからは明るく開放的な雰囲気が伝わる。
さらにその奥には野尻湖が広がるから、上から下に下がっていく繋がりがとても魅力的。
スキップフロアのお手本にしたい。
トイレには無骨な船舶の窓が。
こういうのはやっぱり開けて見たくなる。
開けると中庭越しからダイニングの窓、リビングの窓、森へと引き込まれていく。
この細かな繫がりも魅力の一つ。
視線の先の重要性が改めて理解できる体験。
気持ちのいい環境でプランニングしようと思って、家族サービスと仕事の両立を図ろうと思った今回の宿泊。
思わぬアップグレードに家族も大喜び。
私はとりあえず落ち着かず、仕事どころではなく、部屋のスケッチと実測をやっていたら、大きすぎてあっという間に夕飯の時間に。
仕事は中途半端になったけど、それ以上にいい勉強、体験になった。
こういう一つ一つの体感の積み上げは、確実に家づくりにいい影響を与えると思う。
野尻湖ホテルエルボスコで過ごした時間。
本当に素敵でした。